匿名Twitterの危険性
1月28日になりますが、第3回Twitter研究会に参加してきました。
会場を提供されてくださっていたフューチャーアーキテクト株式会社さんの入口が素敵で、一瞬会場間違ったんじゃないかと…
Twitter研究会には今回初めて参加しましたが、TwitterだけでなくいろいろなSNSについてのお話が聴けて非常に興味深い会でした。
当日の資料は以下にまとめられています。
http://homepage3.nifty.com/toremoro/study/twitterconf3.html
この中でも特にこちらのお二人によるお話(当日の資料にリンクを貼っています)を聴いて…
毛利勝久さん(IT系ライター・編集者)
炎上のツイッターと実名のフェイスブック―われわれに安住の約束の地(SNS)は存在するのか?
池田和史さん(KDDI研究所)
ビジネスおよびコンシューマ向けTwitter解析技術の紹介
これらの話しを聴いて、以前から匿名でTwitterを使っている人の危険性について思う所があったので、今回エントリとして上げてみました。
プロフィールを公開していなければ大丈夫?
毛利さんのお話によると、最近はTwitterに限らずオンライン上での実名(本名)公開に6割が抵抗あるという調査結果(MMD研究所)があるそうです。
ただし、昨年に比べると89.1%→62.1%に減ったという結果でもあり以前よりも実名が増えてきたというのも確かだと思います。
実名主義のFacebookに対して、Twitterは実名と匿名が混在している世界です。そんな中で、はたして匿名の方々は匿名を貫く事ができるのでしょうか。
まず興味深かったのは、池田さんによる「プロフィール推定に用いる言葉の例」。それらは
”プロフィールが既知である少数の投稿者の投稿から、各プロフィールに特徴的に出現する言葉を統計的な指標を用いて自動抽出”
されており、Twitter上に現れる言葉でだいたいの属性が分かるとのことです。
ではここで、とある5人のツイートを見てみましょう。
(私が作った例文なので、リアルな方々の発言とは若干ずれがあるかもしれません。ご了承ください)
「授業終わった―♪とりま梅田なぅ。だれかいつものマクドいこー♡」
「講義終わって渋谷なう。だりぃー。吉牛くって帰るか」
「今日はサークルもバイトもお休みだから銀座でお母さんとご飯食べるよ☆」
「羽田到着!博多で初めて親父と飲んだw夏にまた帰る予定やけん就活がんばろう!」
「残業終わった。娘ももう寝てる時間だし新橋でちょっと飲んで帰る」
いかがでしょうか?プロフィールを公表していなくても、このひとつのつぶやきだけでも、性別や住んでいる地域、学生なのか社会人なのか、一人暮らしなのか実家なのか家庭持ちなのか…だいたいの属性は分かるのではないかと思います。
さらに、Twitterはこれらの発言が積み重なっているので、ありとあらゆる事が分かるかもしれません。そこにリアルの友人がひとり居るだけで、その友人の周りの人からすればだいたい誰かは予想がつくでしょう。
(なお、ここで言う匿名とは、アカウントと個人が完全に切り離されている状態であって、本名は公表していなくてもアカウントと個人が結びつけば、それもおおまかに実名として捉えてください)
毛利さんが仰ってましたが、誰であるかという「個人識別情報」と、普段つぶやいている行動等の「不可侵私的領域の情報」はきちんと分ける。
それが誰なのか分かっても、プライバシーを考慮して結び付けないでおくのが、せめてものマナーなのかなと自分は思いました。
もし、その個人は匿名のつもりでも、そこにリアルなソーシャルグラフが少しでも入り込んでいると、周りはきっと気づいているだろうし完全に隠す事は不可能だと思っています。
鍵をかけていれば大丈夫?
では、ツイートに鍵をかけてみてはどうでしょうか。
これなら相手を承認しないかぎり、ソーシャルグラフも見えづらいですし(完全に隠す事はできませんが)
ツイート自体は見えないので安全かと思われるものの…
もともとオープンで情報の伝播に長けたTwitterであるだけに、ここにも危険性が潜んでいます。
何故、完全に隠す事はできないのか?
ここから、とある架空の会社のとても仲の良い4人のやりとりを例に挙げてみます。(2012年2月12日現在、存在しないアカウントです)
新卒のあかねは、研修期間までは同期の仲間と一緒に実名・匿名を意識せずにTwitterを使っていましたが、会社の部署に配属されてからは鍵をかける事となります。
なので、配属後の播戸先輩とは相互フォローしていないため、現在のフォローの相関図は以下のようになっています。
試用期間も終わり、明日から初めて長い期間有休を取って沖縄旅行へ向かうのあかねのツイートから、ある事が起こります。
■あか @akn_dayo 鍵
明日から沖縄だー楽しみ♪
■カオル @caol0412
@akn_dayo 楽しんできてね!
■あか @akn_dayo 鍵
@caol0412 うん。播戸先輩へのお土産何にしようかな♪
■ダイスケ @daisukeeeeeen
@akn_dayo 彼氏と?お土産期待してる。
■あか @akn_dayo 鍵
@daisukeeeeeen 彼氏とかいないし(>_<)大学時代の友達!お土産なんか買ってくるよ。
■ダイスケ @daisukeeeeeen
@akn_dayo おぅ沖縄楽しんでこい!お土産たのしみですね @bando_0710 先輩!
ここでメンションで 播戸先輩 @bando_0710 が気づく事になります。
…さて、ここで女性の方は「ダイスケ空気読めてない!」となるかもしれません。
しかしダイスケからすると、こんな状況ではそんな事は知った事では無い訳です。
何故、あかねが配属後にツイートに鍵をかけたのか。
ダイスケからすると、いつの間にかあかねが鍵をかけていたという状態。
Twitter上ではダイスケもカオルも普通に播戸先輩とやりとりしている。
みんなとても仲がいいのに何故あかねは播戸先輩をフォローしていない…そんな事をダイスケは知らない。
播戸先輩は気づいてダイスケのツイートを見るでしょう。鍵付きとはいえ@akn_dayoが誰だかきっと気づきます。フォローの申請が行くかもしれません。
(カオルのツイートをもし見たとしても、こちらは不確定要素が多いので気づかないかもしれません)
鍵をかけて例えツイートが見えなくても、リプライのやりとり、そしてオープンだという前提で使っている相手の何気ない一言で気づかれてしまうかもしれません。
そもそも、同僚のリストに入っていたりすると、それだけで分かってしまう場合もあります。
上記はすごく極端な例ではあるものの、Twitterの匿名性には危うさが潜んでいるものですので、完全に隠すのは難しいと言えます。
それでも匿名で使い続けるのは個人の自由だとは思いますので、その場合は充分に気をつけてください。
ただ、周りはそこまで深く考慮できないので、ダイスケのような人が居たとしても責めないであげてくださいね。
今回のTwitter研究会の中で印象に残った言葉。
「ツールがシンプルだからといって、使い方が簡単という訳ではない」